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仕組み化・DX

社員の個人アカウントでAIを使う前に、会社で決めておく線

個人のアカウントと会社のアカウントの間に引く線

「自分のスマホのChatGPTで、お客様への返信を考えてもいいですか」

社員にこう聞かれたとします。その場で答えるのは、意外と難しい質問です。「学習に使わない設定にしておけば大丈夫」と答えたくなりますが、その答えでは、会社として決めておくべきことが1つ残ります。

社内ルールを作るとき、「どの情報を入れてはいけないか」から考え始めると、「そもそも、誰のアカウントで使うのか」が抜け落ちやすくなります。

この記事では、社員の個人アカウントを仕事に使うときに、会社がどこで線を引くかを、「誰が管理しているか」という軸で整理します。

この記事の内容
  1. 学習をオフにしても、残る問題
  2. 分け方の軸は「誰が管理しているか」
  3. 会社のアカウントで扱うもの、個人アカウントで扱ってよいもの
  4. 会社が費用を出した個人プランは、どちらに入るか
  5. まとめ

学習をオフにしても、残る問題

ChatGPT・Gemini・Claudeなど、個人向けのAIには、入力した内容を学習(AIの性能を上げるための材料)に使わない設定があります。社員にこの設定をしてもらえば安心、と考えるのは自然なことです。

ただ、この設定で変わるのは「学習に使うかどうか」だけです。

学習の設定で変わるのは「学習に使うか」だけ。管理する人と会話が残ることは変わらない

その社員のアカウントを、会社は管理していません。ログインするのは社員本人で、設定を変えるのも本人です。社員が辞めたあと、そのアカウントに残った会話を、会社の側から消したり止めたりする仕組みはありません。設定が今もオフのままかも、会社の側からは確かめられません。

もう1つ、「学習に使わない」と「保存されない」は別の話です。Googleの公式ヘルプによると、Geminiは[アクティビティの保存]を止めた後でも、72時間は会話がアカウントに残ります。個人のGoogleアカウントでは、サービス改良のために人が会話の一部を確認することがあります。さらに、設定をオフにしている場合や一時チャットを使っている場合でも、利用者や一般の人を守るために、人による確認を含めて会話が使われることがある、と書かれています。一方、会社のGoogle Workspaceについては、人による確認は行わない、と分けて書かれています(2026年9月17日時点)。

同じAIでも、個人のアカウントか、会社の契約かで、扱いが変わる。社内ルールの線は、ここから引くと決めやすくなります。

分け方の軸は「誰が管理しているか」

国の資料も、情報の中身だけでなく、「どのAIを、どういう契約で使うか」とセットで考える形になっています。

経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック」(令和6年2月改訂)は、生成AIに関するコラムで次のように書いています。

AIを自社の業務やサービスに導入していない場合でも、個人が生成AIを利用する場合のルールは重要です。

同じコラムでは、起こりうることの例として、会社のルールづくりや周知が遅れ、社員が個人で、秘密を守る契約が十分でない生成AIを使い、営業秘密を学習させてしまう場面が挙げられています。

また、国の会議(デジタル社会推進会議幹事会)が政府職員向けにまとめた「ChatGPT等の生成AIの業務利用に関する申合せ」(第2.1版・2025年3月25日)は、利用規約に同意するだけで使える形のサービスでは機密にあたる情報を扱わない、と分けています。会社向けの決まりではありませんが、「契約の形で、入れてよい情報が変わる」という考え方は、参考になります。

そこでKK CONNECTでは、アカウントを「誰が管理しているか」で3つに分けて考えています。

  • 会社が管理しているアカウント(会社向けの契約で、会社が発行したもの)
  • 社長本人が管理している個人アカウント
  • 社員本人が管理している個人アカウント

会社のアカウントで扱うもの、個人アカウントで扱ってよいもの

3つの分け方に、入れてよい範囲を当てはめると、次のようになります。ここからはKK CONNECTの考え方で、法律や国の資料で決まった区分ではありません。

使う人アカウント入れてよい範囲
社員個人向け(無料・有料どちらも)すでに公開している情報だけ
社長本人個人向け・学習に使わない設定をしている社内で決めた線に沿って分ける
社長本人個人向け・設定をしていない、または分からないすでに公開している情報だけ
社員・社長会社向けの契約の、会社のアカウント社内で決めた線に沿って分ける

社員の個人アカウントでは、学習の設定にかかわらず、ホームページに載せている文章や、配り終えたチラシのような「もう外に出ている情報」だけにします。お客様の名前が入ったメールや、まだ発表していない値上げの話を扱うなら、会社のアカウントで扱う、という線です。

社長本人の個人アカウントを別の行にしているのは、ログインも設定も社長自身が握っているからです。辞めて止められなくなる心配はありません。設定をしていても、何でも入れてよくなるわけではなく、社内で決めた線で分けます。ただし、設定をしていない、またはどうなっているか分からないなら、社員と同じ扱いにします。

「社内で決めた線」は、KK CONNECTでは「入れない/加工すれば入れる/そのまま入れる」の3段階にしています。パスワードは、どのアカウントでも入れません。

会社のアカウントを用意するかどうかを決める前に、候補のサービスで次の点を公式ページで確かめておくと、社内で説明しやすくなります。

  • 会社向けの契約で、入力した内容が学習に使われない扱いになっているか
  • 社員が辞めたとき、会社側でその人の利用を止められるか
  • 会話の履歴を、会社と社員のどちらが持つ形か

どの情報をどの段階に置くかは、業種や使っているサービスで変わります。自社の情報を当てはめて1枚のルールにする指示文を、AI利用ルール1枚ものを作る指示文のページに置いています。AIに貼ると、最初に「どのサービスを、どの種類のアカウントで、誰が使うか」を質問してくる作りです(試したのはOpenAIのAIだけで、GeminiとClaudeではまだ試していません)。

会社が費用を出した個人プランは、どちらに入るか

迷いやすいのが、会社が費用を払って、社員に個人向けの有料プランを持たせている場合です。

お金を出しているのは会社でも、アカウントを管理しているのは社員本人です。ログインの情報も、設定を変える権限も、社員の側にあります。サービス側も、料金ではなく契約の種類で分けています。たとえばAnthropicは、Claudeの有料の個人向けプラン(Pro・Max)を無料プランと同じ個人向けの規約で扱い、会社向けの契約(Claude for Work(Team・Enterprise など)や API など)とは別にしています(2026年9月17日時点で公式ページを確認)。

費用を払うのは会社、アカウントを管理するのは社員。線は管理する人で引く

そのため、この場合も社員の個人アカウントと同じ扱いにしています。分ける基準は「料金を誰が払っているか」ではなく、「誰が管理しているか」です。

実は、KK CONNECTでも、このアカウントごとの線を決めたときは、1回で決めきれたわけではありません。

最初に決めたのは「社員の個人アカウントは、学習の設定にかかわらず、公開済みの情報だけ」という一文でした。ところが確認の段階で、「社長本人の個人アカウントはどうするのか」「会社が費用を払っている個人プランはどうするのか」の抜けが見つかり、同じ日のうちに2回書き足しています。書き足すたびに立ち戻ったのが、「会社が管理できないのは、社員のアカウントだから」という理由でした。

理由を一言で持っておくと、あとから出てきた例外も同じ物差しで判断できます。

まとめ

  • 学習をオフにしても、社員の個人アカウントを会社が管理できないことは変わりません
  • 線は「誰が管理しているアカウントか」で引くと、例外が出ても迷いにくくなります
  • 会社が費用を出した個人プランも、管理しているのが社員なら、個人アカウントの側です

参照した資料(いずれも2026年9月17日に確認。経済産業省の資料は9月14日に確認)

設定の名前や扱いは変わることがあります。この記事は法律上の判断を示すものではありません。


社員の人数、使っているAI、扱う情報によって、どこまでを会社のアカウントに寄せるかは変わります。御社の業務に合わせた線引きを、30分で一緒に整理します。

今中 樹一
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