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役割を決めたら、次は道具と権限 ── AI社員で起きた3つのつまずき

「担当は決めました。あとはお願いします」。そう伝えたのに、しばらく経っても何も上がってこない。催促すると、本人は本人で止まっている。こういうこと、ありますよね。

うちはAI社員に役割を分けて、仕事を回しています。AIエージェント(指示を受けて、自分で手順を決めて働くAIのことです)に、記録・調査・執筆・品質の確認といった役割を、それぞれ割り当てた形です。

それでも10月1日の1日のうちに、「役割はあるのに、仕事が流れない」が3件、同時に目の前にありました。1件は1週間以上前から続いているものです。どれもうちの中で起きたことなので、そのまま書きます。お客様の話は出てきません。

先にお伝えすると、3件に共通していたのは、つまずいた場所が役割の側ではなく、その役割が何に手を伸ばせるか——道具と権限——の側だったことです。

この記事の内容
  1. 「記録を取り込む」と書いてあるのに、記録に手が届かなかった
  2. 「合格です」と判断はできても、その記録を自分で残せない
  3. 担当の手では、コマンドを1行も実行できない
  4. 机に座っていたのは、仕事を持っている社員だけだった
  5. 役割の次に決めるのは、道具と権限の2つ
  6. いま、1つだけ確かめるなら

「記録を取り込む」と書いてあるのに、記録に手が届かなかった

社内に溜めている記録を取り込む役割の担当がいます。役割の説明にも、記録を取り込む、と書いてあります。

ところが、その担当には、社内に溜めている記録を取ってくる道具が渡っていませんでした。取りに行く手段が無いので、最初の一歩で止まります。役割の紙の上では完結しているのに、実際には手が届かないわけです。

そこで、こちらが先に記録を取り出してファイルに置き、それを担当に渡す形に分担を決めてあります。いまもその形で回しています。

やっかいなのは、止まっている様子が、外からは別のものに見えることです。やる気の問題にも、力の問題にも見えてしまいます。実際はどちらでもなくて、ただ渡していなかっただけでした。

人を採用したときに置き換えると、分かりやすいと思います。担当にはしたけれど、必要なシステムのアカウントが発行されていない。鍵を持っていないから、その部屋に入れない。本人は何もしていないのに、いつのまにかその人の評価の話になってしまう。

「合格です」と判断はできても、その記録を自分で残せない

品質を確認する役割の担当もいます。問題を見つけて、直す場所まで示すのが役割です。

ところが、この担当にはファイルを書く権限がありません。判断はできるのに、合格の記録を自分で残せない。そこで今は、判断の中身を文章で報告してもらい、別の者がそれを保存しています。

この形で落ちるのは、判断の質ではありません。落ちるのは記録の確実性のほうです。報告を受けた側が写し忘れたら、その判断は無かったことになります。

「判断する権限」と「記録を残す権限」は、別のものです。片方だけ渡すと、残りの半分は人の手に戻ってきます。戻ってくること自体は、悪いことではありません。戻ってくると決めてあれば、誰かが受け止めます。決めていないと、落ちます。

担当の手では、コマンドを1行も実行できない

3つ目は、もう少し大きな話です。ある道具が壊れていて、担当の側では誰も、コマンド(パソコンに文字で命令を打ち込む操作のことです)を1行も実行できない状態が1週間以上続いています。

いちばん影響を受けているのは、プログラムを書く役割の担当です。書いたものを、その場で試して確かめられません。できあがりを見ないまま、次に渡すことになります。

今は「このコマンドを実行してください」と報告に書いてもらい、別の者が代わりに実行しています。仕事は流れています。ただ、1往復ぶん遅くなりますし、報告の中の1行を読み飛ばせば、そこで止まります。

ここで書いておきたいのは、道具が壊れたこと自体ではありません。コマンドを使う担当の働き方が、まとめて1つの道具の状態に乗っていた、ということです。役割を書いた表には、誰がどの道具を使えるかまでは書いてあります。書いていなかったのは、その1つが止まったときに全体がどうなるか、のほうでした。止まってみると、同じ1つの道具の上に乗っていた形でした。

人の会社でいえば、全員が同じ1本の鍵を使い回していた、という状態に近いと思います。折れるまで、それが1本だったことに誰も気づきません。

机に座っていたのは、仕事を持っている社員だけだった

もう1つ、短い話を。

うちはAI社員の状態を、オフィスを模した画面で見られるようにしています。その日、机に座っていない社員が何人かいました。画面の作りを確かめたところ、仕事を持っている社員だけが机に着くようになっていました。手が空いている社員は立っている。そういう仕組みです。

この作りは、ちょうどいいところを映していると思います。役割があることと、いま仕事が流れていることは、別だということです。席の数ではなく、座っている人の数のほうが、その時間に動いている仕事の数でした。

役割の次に決めるのは、道具と権限の2つ

3件を並べると、足りなかったものは2つでした。

1つ目は、道具です。 その役割の仕事を終わらせるまでに、どこの何に手を伸ばす必要があるか。記録を取り込む担当なら、記録そのものに届かなければ始まりません。渡せないなら、渡せないまま放っておかずに、人が間に入る分担を先に決めておく。うちがやったのは、これです。

2つ目は、権限です。 見るだけなのか、書けるのか、消せるのか。全部渡さなくてもかまいません。判断だけ任せて、記録は人が持つ。その形でも仕事は回ります。決まってさえいれば、止まりにくくなります。

順番にすると、こうなります。役割を決める。その役割が触るものを並べる。どこまで触ってよいかを決める。触れないところは、誰に戻すかを決める。この4つです。

これは、AIに限った話ではないと思っています。「担当を決めました」のあとに、アカウント、鍵、承認してよい金額の上限、詰まったときの戻し先。そこまで決めて、はじめて仕事になります。

いま、1つだけ確かめるなら

いちばん最近、担当を決めた仕事を1つ思い浮かべてください。AIに任せた仕事でも、人に任せた仕事でもかまいません。

そのうえで、その担当が仕事を終わらせるまでに触る必要のあるものを、3つ書き出してみてください。システム、ファイル、承認をくれる人。何でもかまいません。書き出したら、そのうち「いま手が届かないもの」に丸を付けます。

丸が1つも付かなければ、その役割は動き出せる状態です。1つでも付いたなら、止まっているのは担当ではなく、そこです。数分で書き出せます。

役割は紙の上で決まりますが、道具と権限は、いまお使いの仕組みを見ないと決まりません。うちがAI社員にどんな役割を持たせているかは、AI社員のご紹介にまとめています。

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今中 樹一
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